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留学体験記 フィンランド ラップランド大学

diary

デザイン学部人間情報デザインコース4年 茂木楓さん
(留学期間:2020年8月~2021年7月)

はじめに

デザイン学部棟(入口)
デザイン学部棟(入口)

大学4年の前期終了後、1年間フィンランドのラップランド大学に交換留学をしました。4年前期に開講される授業の最終課題を提出し、卒業研究の中間発表を終えてすぐの出発となりました。

2020年度はコロナウイルスの影響もあり、ラップランド大学が留学生の受け入れを許可してくれるのか、またVISAの申請が受理されるかなど、日本出発までに様々な問題に直面しました。
特に私は7月頃に合格の最終結果を得たので、フィンランド到着後も自分にチューター(フィンランドでお世話してくれる生徒)が割り当てられていないなどのハプニングがありました。

さらに驚いたことに1年間の留学期間、日本人留学生は自分だけでした。例年は7~8人いるそうです。私が学生交流協定締結後初めての交換留学生であり前例がほとんどなかったこと、また2020年はパンデミックの年であったので、これらのハプニングは仕方がなかったのかなと思います。
困難な状況でも、助けて欲しいと周りに声をかけ、友人や家族、先生方に支えて頂きながら乗り越えられたことは今の自分に自信をもたらしているので、いい経験ができたと思っています。

授業について

8月中旬に留学生のオリエンテーションがオンラインで開催されます。シェアフラットをしていた4人(イタリア、ブルガリア、ベルギー、フランスの子です)の友人とキッチンで視聴しました。当時の私は、オリエンテーションの内容を3割程度しか理解できていなかったため、友人とコーディネーターの方に助けてもらいながら履修登録をしました。
フィンランド語のクラスなど、留学生向けの一部授業は8月末から開講されます。初回を逃すと、参加が難しくなるので注意が必要です!
また、デザイン学部は、半年のうちに最低25単位、最大35単位取得が可能なことも予め知っておくといいと思います。

ここからは秋セメスターと春セメスターに分けて、特に記憶に残っている授業についてお話します。

履修した科目名・単位数(ECTS)

  1. 授業内容について(どんなことに取り組んだか、学んだか)
  2. 難しかったか
  3. 授業の形式について(⚠︎2020年度はコロナの影響でオンラインクラスが多かったです)

秋セメスター[2020年8月〜2020年12月]

Printing Workshop・3ECTS
  1. テキスタイルデザインの授業。スクリーンと呼ばれる道具を使って、2mの布に自分が考えたデザインを印刷します。
    デザインはもちろん、使う布の素材や染料の配合まで考えます。
  2. 座学より作業をする時間が多いので、語学力が低くても参加することができます。先生も相談に優しく対応してくれます。
    また、語学力ではなく、作業に取り組む意欲や姿勢を評価してくれます。初めて受講するクラスにぴったりだと思います!
  3. デザイン学部棟(3階作業場)で実施されました。教室に入るときは、電子キーが必要なので注意してください!
    鍵は、図書館近くの案内所で貰うことができます。
スクリーンを使い、布に印刷している様子
スクリーンを使い、布に印刷している様子
作成した波模様のスクリーン
作成した波模様のスクリーン
Arctic Inspiration・3ECTS
  1. フィンランドの生活を体験する授業。Kemijärvi(ケミヤルヴィ)という先生の故郷に、3泊4日滞在しました。
    滞在中は、Kemijärviの戦争や産業に関する歴史を学んだり、ハイキングに行きベリー詰みや薪割りをしたり、カヤックやカヌーに挑戦したり、サーモン料理を食べたり、サウナに入りその後湖で泳いだりしました。
    その後Rovaniemiに戻り、4日間で学んだことをまとめプレゼンをします。
  2. テントの組み立てやご飯の準備など、共同作業が多いため生徒と話す機会が多いです。ですので、会話表現や語学力の大切さを痛感しました。しかし、話してみよう!という意欲とコミュニケーション能力があれば、大変ながらも授業を楽しむことができます。
  3. Kemijärvi(ケミヤルヴィ)という学外での活動中心。初回授業は大学に集まります。
    プロダクトデザインを学んでいる学生が優先的に選択できるクラスなので、定員オーバーの場合参加できない可能性があります。
ケミヤルビの湖(Arctic Inspirationクラス)
授業で訪れた湖の景色

春セメスター[2021年1月〜2021年5月]

Workshop・2ECTS
  1. デッサンの授業。ヌードモデルの方がポーズを取ってくれるので、それをキャンバスにひたすらデッサンします。
    モデルは男性女性1人ずついるので、自分がどちらを描く練習がしたいのか、毎授業選ぶことができます。私は幅広く描き方を学びたかったので、男性→女性→男性と毎授業変えていました。女性のモデルだけを描く生徒もいたので、人それぞれ選択ができます。
    デッサン中は先生が回ってくるので、アドバイスをもらうことができます。声をかけないと、集中していると思われて先生からアドバイスをもらえないことがあるので、自分から声をかけましょう。
    授業前半は、1~3分でスピードを意識したスケッチ練習をします。授業中盤からは、1時間使って1つのポーズをキャンバスに大きく描く練習をします。人によってはペイントをする人もいます。表現手法は個々の自由です。10~20分集中して描く→10分休憩をする→10~20分集中して描く、を繰り返して絵を完成させます。
  2. 毎週の授業は、とても楽しく参加することができます。
    大変だったことは、学期末にプレゼンテーションがあるので、その時に英語の原稿を準備することです。
    自分のペースで、自分が好きな方法でデッサンに挑戦ができるのがとても良かったです。体調や気分が原因で全く集中できない日もありましたが、そういう日は先生が好きなだけ休憩して良いと言ってくれました。また、曲を聞いて気分転換をしながらデッサンすることもできます(6割くらいの生徒は、イヤホンで曲を聴きながら作業していました)。
    休憩時間はこの表現いいね〜など生徒同士で褒めあうことが多く、クラス全体の雰囲気がいいです。先生が出席などの態度と、初授業の日からどのくらい成長したのかを評価してくれるため、デッサン初心者でも参加しやすいクラスです!
  3. 基本は学校で開講。コロナが酷かった3月〜4月は自宅で自習でした。
Teach and Learn (Finnish and Japanese)・2ECTS
  1. 2人組になり、パートナーの母国語を学ぶプログラムです
    単位は出ますが、クラスではないため先生がいません。なので自分たちで学ぶ日時と内容を決めることができます。
    私はフィンランド人の相方がいたので、2人で合計50時間(フィンランド語25時間、日本語25時間)一緒に学び単位を得ました。日本文化を英語で伝える練習になります。私はフィンランド文化や生活を通じて、フィンランド語を学びました。フィンランド語の授業でわからなかった文法の解説を、パートナーがしてくれたこともありました。
  2. 1番苦労したことは、日本語に興味を持つパートナーを、”自分で探す”ことです。
    学んでいる場所がヨーロッパということも関係していると思います。フランス語やスペイン語を学びたい生徒は見つけやすいですが、日本語は難しいです。
    私はWhatsApp(日本でいうLINE)やFacebook留学生のグループチャットで日本語を学びたい生徒がいないか聞いたり、ラップランド大学で日本語を教えている先生にメールを送り、日本語に興味を持っている生徒がいないか相談をしたりすることでパートナーを見つけることができました。見つけてからはとても楽しいのでおすすめのプログラムです。
    パートナーとは夏休みも南フィンランドで2回会いました。(夏休みは南部の故郷に帰るフィンランド人の生徒が多いです)帰国後もzoomで互いの言語を教えあいました。そして現在パートナーは日本に留学に来ているので、日本でも会ってます!!
  3. 学校、それぞれの家、公園などどこでも
Survival Finnish・2ECTS
  1. 基礎となるフィンランド語の授業。
    「おはよう」や「ありがとう」という簡単な挨拶、基礎文法、時間表現の方法、家族・食べ物・動物に関する単語を学ぶことができます。
    教材は先生が用意してくれる冊子です。クラスは、前回の宿題解説→その日習う文法を先生が解説→2~3人のグループで練習問題に挑戦→次回授業の宿題発表、予定の確認という流れで進みます。先生が、オンラインでもイラストを使った問題や穴埋めゲームを授業で扱ってくれるので、飽きることなく学習を楽しめます。
    個人的にはFinnish for foreigners1(こちらもフィンランド語の基礎文法・表現を学ぶクラスで同時期に開催されています)より、授業の難易度が易しく感じました。しかし、Survival Finnishのクラスはオンラインで最終テストがあります。紙を見るのが禁止されていたため、カメラの前で1分間フィンランド語で自己紹介をすることがかなり難しかったです。
  2. デザイン学部棟(食堂上の空間)
    デザイン学部棟(食堂上の空間)
  1. Survival FinnishとFinnish for foreigners1の2つを同じ学期に取ることは可能です。
    この2つの授業時間が被ることがよくあるので、理想は秋セメスターにSurvival Finnishを取り、春にFinnish for foreigners1もしくはさらに上のフィンランド語のクラスを取ることです。私のように2つまとめて取る場合でも、片方のクラスで学んだことの復習をもう片方のクラスでできるので、良い勉強になります!
    どちらのクラスも、初回授業が学期始まってすぐなので、授業登録を忘れないようにしてください!!私はそれを知らなくて秋取ることができなかったので..!
  2. オンラインで開講

留学生活のこと

楽しかったこと

フィンランドのバーベキュー(Arctic Inspiration クラス)
フィンランドのバーベキュー

友達と過ごした時間は全て楽しかったです。
休みの日は湖の近くでバーベキューをしたり(ソーセージを食べるのが定番です!)、国立自然公園にハイキングに出掛けたり、旅行したり、クリスマスやイースターなどイベントごとにパーティーを開いてお祝いしたり、シェアフラットしているフラットメイトと夜ごはんを一緒に食べたり、一緒に映画をみたり、サウナに行ったり、とにかくほぼ毎日誰かと予定がある、充実した日々を過ごせました。
留学してすぐの英語を話せなかった私を遊びに誘ってくれたり、1年間共に時間を過ごしてくれた友人たちには感謝しかありません。

1番思い出に残っていること

白夜のシーズンです。長かった冬が明け、日照時間がぐんと長くなるため心が幸せになります。
夜22時を過ぎても外は15時くらいの明るさなので、夜でも散歩を楽しんだり、公園でバーベキューを楽しむことができます。6月からは夏休みに入るので、友達とハイキングに行ったり、釣りを楽しんだり、アイス屋さんに行きベリー味のアイスを食べたり、夏のサンタクロース村に行ったりと帰国までに残された時間を大切に、でもまったりリラックスして過ごします(勿論帰国に必要な書類作成やPCR検査を受けるための予約、寮の掃除など忙しい時期でもあります)。半年または1年間を共に過ごした友人たちと別れる時期なので、1番思い出に残っているんだと思います。留学生の多くは5月中旬〜末に帰国してしまいますが、自分の友人は7月まで滞在してる人が多くラッキーでした!

ミッドサマー(白夜)でサウナ
ミッドサマー(白夜)でサウナ

白夜のシーズンで最も思い出に残っているのはサウナです。夏至の週にロヴァニエミよりさらに北にあるIvalo(イヴァロ)に行き、借りたコテージでサウナを楽しみました。私が好きな薪ストーブ式で(電気ストーブと汗の出方が違います)、天気も良く、22~1時に幻想的な空間でのサウナを楽しむことができました。サウナに入りながら友人と色々な話をし、より仲が深まりました!

余談ですが、思い出に残っていることの1つにサーモンがあります。スーパーの魚屋さんで売られているノルウェー産のサーモンが、とても美味しかったです。北欧に行ったらキッコーマンの醤油とわさびを買い、サーモンの刺身を食べてみてください!私は夏休みに自転車を漕いでサーモンを買いに行き、いろんな友達に刺身を勧める程フィンランドで食べたサーモンがとても好きでした。「え?!生で食べれるの?!?!」と反応する友人もいましたが、みんな1口食べると「美味しい!!」と言っていたので是非一緒に食べて盛り上がってみてください!

きてよかったと思ったこと

ロヴァニエミの景色
ウルホケッコネン国立自然公園

これは間違いなく、自然の中でのんびりとリラックスした時間を過ごせることです!
北京出身の友人とも意気投合したのですが、都市に住んでいると人口密度が高く自然も多くはありません。しかし、ロヴァニエミではどこでも5分歩けば湖があり、30分自転車を漕げば森の中で自然を満喫することができます。自然と人、人と人の距離感が心地よいと感じました。
そして冬のシーズンはオーロラ見放題です!外に行かなくとも寮の窓から見ることだってできちゃいます。癒しを求めていたり自然が好きな方に、フィンランドはお勧めの場所です。

きてよかったと思ったこと2

これは帰国してから特に思うのですが、色々な国の友達ができたことです。
自分の夢だった「いろんな国の人と仲良くなりたい」という夢が叶いました。日本でも友達は作れますが、外国の友達を作ることは、物事を多角的に捉えたり、自分の考えを広げるためにも良いことだと思います。
例えば、日本にいると、「主張が強すぎ」や「周りのことをもっと考えなさい」と言われることがあります。人に合わせることもあったり、自分らしくいられないと感じることもあります。しかし留学先では、「シャイだね」や「もっと感情表現しないの?」「そんなに合わせようとするのは何故?」と言われました。当たり前かもしれませんが、いる環境によって言われることは変わります。外国人の友達からストレートな褒め言葉や注意を受けることで、自己否定を強くしなくなったり、以前より自分の性格や考えを認めることができるようになりました。自分の中では大きな成長です。

デザイン学部棟(食堂)
デザイン学部棟(食堂)

友達とは今でもチャットをして近況報告をしたり、ビデオ通話をしたり、お菓子など郵送しあって楽しんだり、週に1回母国語を教えあっています。

きてよかったと思ったこと3

ロヴァニエミの景色
ロヴァニエミの景色

フィンランドスタイルの授業を受けられたことです。Understanding Finlandの授業や授業内での先生や生徒とのやりとりを通じて、何故フィンランドでの生活が心地よく思えるのか、自分の性格に合っているのか、気がつくことができました。来るまでは勉強のレベルが高い・環境が整っているといった抽象的なイメージを抱いていましたが、滞在を経て、フィンランドでは「何に興味があるのか」を大切にすること、自分の意見も他の人の意見も全部正しいという教育を受けているから、褒め合う生徒が多いこと、先生が生徒を信じ、生徒・親も先生を信じているため、授業の柔軟性が非常に高く、個々にあった授業が実施されていることに気が付きました。留学前と比較して、具体的にフィンランドの学校教育を知ることができたと感じます。

大変だったこと

1年間を通して最も大変だったことは、寮での生活です。特にシェアフラット・ルームシェアとパーティーの騒音問題は大変でした。
私は5ヶ月間、5人でキッチンやシャワーを共有し、自分ともう1人の留学生の計2人でルームシェアをしていました。部屋を共有することは、想像以上に大変でした。生活リズムが異なるからです。ルームメイトは毎日22時に寝る人で、私は0時に寝る人でした。部屋の電気は1つしかないため、毎日22時になると私がキッチンに移動していました。
また、外出制限期間中、同じ時間にそれぞれオンラインクラスがあると最悪です。同じクラスを取っている日はいいのですが、違うクラスだとお互いが相手の聴講またはディスカッションを妨害することになります。
*2021年の7月からルームシェア制度が撤廃されたはずなので、これから行く学生さんは心配しなくていいと思います。大人数での生活は、楽しいこともありますが、大変なこともあるよというお話でした。
パーティーの騒音問題は、カルチャーショックの一部だと思います。外国では家に友人を招待し、ディナーを振る舞い、曲をかけ、お酒を飲みながら踊る文化があります。寮のあちこちで、20~40人規模のパーティーをすることがよくあります。そしていくつかのパーティーは、朝の4時まで続きます。日本では考えられないかもしれませんが、0時を過ぎても大音量で曲をかける留学生がいます。寝たい人のためにグループチャットで注意をする学生もいますが、残念なことに効果はありません。時には通報を受け警察が寮に来るレベルでうるさいです(恐らく近隣住民の方が通報していた)。
翌日授業で、早く起きる必要がある時には最悪な状況でした。留学経験のある友人に相談をすると、同じ状況を経験したことがあるらしく、「どんなに注意してもやめない人はいるから諦めた方がいいよ」と言われました。「無理!」と感じた場合は早い段階で、自ら別の寮に引っ越しをすることをお勧めします。

日本に帰りたいと思ったこと

滞在中に、「日本に帰りたい」と強く思ったことはありませんでした。
5~7月は、フィンランドにもっといたい気持ちが大きかったです。
ですが、学校の課題提出に追われている時や、体調を崩している時に、日本食を猛烈に食べたくなることがありました。
私の場合は、課題や、人とうまくコミュニケーションが取れずストレスが溜まっている時、日本茶とお味噌汁を作って、ストレス緩和をしていました。
フィンランドのご飯は美味しくないわけではありませんが、やはり20年以上食べてきた日本食は、美味しさと安心感を与えてくれます。お茶、味の素のスティックだしは、持参することをお勧めします。

おわりに

ロヴァニエミの景色(オウナサバラと呼ばれる公園)
ロヴァニエミの景色(オウナサバラと呼ばれる公園)

多くの人にとって、「留学するかどうか」は大きな決断だと思います。留学中や後の生活が想像しにくいため、何度も不安になると思います。悩んだ時は「その決断をして後悔しないか」と「どんな自分になりたいか」を自身に質問してみてください。そして世間体や周りを気にせず、正直に答えてみてください。自分が出した答えは、全て間違っていません。正解がない問題だからです。もし周りが否定してきても、自分の答えに自信を持ってください!「自分がどうしたいか」を大切にしてみてください。それから、信頼している人にたくさん話を聞いてもらい、鼓舞してもらってください。私は友達のおかげで、何度も前向きな気持ちになれたので!自分に正直に!皆さんの挑戦を応援しています!

ここまで読んでいただきありがとうございました!